アルテアの中川です。先日荒川河川敷で開催されたフルマラソンの大会に出場してきたのですが、そこで思わぬアクシデントに遭遇してしまいました。ランニングの大会に出たことがある方はご存知かと思いますが、選手は主催者から配布されるICタグをビニタイ(ビニールで被覆された針金)でシューズにくくりつけて走ります。写真1のようなイメージです。コース上には一定間隔(フルマラソンだと通常5キロごと、あとは中間点およびゴール)で測定用マットが置かれていて各選手の通過時刻とゴールタイムを自動計測します。駅の改札と同じ原理ですね。

写真1 ビニタイで括られた、マラソン大会で使われるICタグ今回もICタグをシューズにくくりつけ、緩まないように何度もねじってスタートしたわけですが、無事ゴールインしてICタグを返そうと思ったら何と無いのです。リアルタイムで各選手の通過地点と時間が分かるインターネットサイトで確認したところ、25キロと30キロの間で取れてしまったようです。これで記録無しとなってしまいました。写真2はスタート・ゴール地点です。ICタグが靴についた状態でマットの上を通過しないとスタートとゴールの時間が測定されません。

写真2 スタート・ゴール地点がっかりしましたが、どうして取れてしまったのか考えてみました。まず走っているうちに緩んできた、というのが考えられますが、その場合ICタグが取れてしまってもビニタイだけは靴ヒモの間に残るのではないかと思います。何も残っていないということは、やはりビニタイが破断してしまった、というのが一番考えられます。ICタグは足の甲のどこにつけても良いので、つま先近くにしたり靴ヒモの結び目近くにしたりできます。今回はあまり考えずにどちらかというとつま先近くにつけていました。試しにこの状態で走る姿勢をとってみたところ、写真3のように蹴り出し時にICタグに引っ張られてビニタイが伸びることが分かりました。自分がマラソンを走る時にはだいたい1分間に180歩で1キロ4分ペースですので、ICタグが30キロ(120分)で取れたとすると
180(歩)×120(分)×0.5(片足分)=約10,000回、この負荷が繰り返されたことになります。

写真3 蹴りだし時に引っ張られるビニタイここでやっと解析の話になるわけですが、皆さんは疲労解析という概念をご存知でしょうか。針金の材料である鋼材に繰り返し荷重を負荷した場合、横軸に破断するまでの負荷回数、縦軸に応力をとって両対数グラフにすると図1のように右下がりの直線となり、ある応力以下になると水平(破断しない)になります。応力(Stress)のSと負荷回数のNをとってS-N線図と呼ばれます。

図1 鋼材負荷をかけた場合のS-N線図なお、これは負荷が弾性範囲内(永久変形しない)での話であり、塑性変形(永久変形が残る)するほど負荷が大きくなると・・・
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